査定に役立つブックガイド
元外科医。生命保険のアンダーライティング歴25年。そろそろ前期高齢者。
告知や診断書を見ているとアンダーライティングは常に最新の医療現場と直結していることを実感しますよね。そんな最新医学をキャッチアップしたいと本を読み続けています。そうした読書の中から医師ではなくても「これは面白い!」と思える本をレビューしていきます。レビューだけで納得するもよし、実際に読んでみるもよし。お楽しみください。
読書以外ではジャズ(女性ヴォーカル好き)を聴いたり、大ファンである西武ライオンズの追っかけをやってみたり。ペンネームのホンタナは姓をイタリア語にしたものですが、「本棚」好きでもあるので・・ダジャレで。
ブックガイド(最新号)

ーー10年ぶりの続巻! 免疫学の最前線ーー
現代免疫物語frontier
mRNAワクチン、アクテムラ、CAR-T細胞、腸管免疫の最前線
岸本忠三・中嶋彰 著
講談社ブルーバックス 税込定価 1155円 2026年6月刊行
「気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。
今回は特別な思い入れのある一冊をご紹介します。実は、この連載の記念すべき第1回目に取り上げたのが、同じ著者コンビによる前作『現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病』でした。そこから約10年、待ちに待った続巻『現代免疫物語frontier』の登場です! まずはこの「10年ぶりの続編!」という事実を、大声で強調しておきたいと思います。
前作では、うさん臭いと思われていた「がん免疫療法」が、オプジーボ(ニボルマブ)などの免疫チェックポイント阻害薬の登場によって新しい時代を切り開く様子が、まるで小説を読むように描かれていました。あれから10年、免疫学はさらに劇的な進化を遂げています。
査定職人から見た「免疫の激変」
私たちが医学部で学んだ頃、免疫学といえば、マクロファージやT細胞が複雑に絡み合う、どこか実体のつかみにくい基礎研究の領域でした。しかし本書を読むと、その認識が完全に「過去の遺物」であることを痛感させられます。新型コロナウイルスを迎え撃ったmRNAワクチンから、著者の岸本先生ご自身が開発を主導したIL-6阻害薬(アクテムラ)、そしてオプジーボに代表されるがん免疫療法まで、免疫学は今や臨床の最前線であり、巨大な医療ビジネスの主戦場となっているのです。
アンダーライティングの現場においても、この10年で景色は一変しました。ひと昔前なら、関節リウマチや自己免疫疾患の既往があれば、一律で厳しい査定(謝絶や重い特別条件)を行っていたかもしれません。しかし現在では、分子標的薬によって進行が劇的にコントロールされ、健常者と変わらない生活を送る患者さんが増えています。がんの引受にしても、免疫療法により「末期」とされた状態からの長期生存例が珍しくなくなりました。
「魔法の弾丸」の光と影
これは喜ばしい反面、保険会社にとっては新たな悩みの種でもあります。これら最先端の免疫治療薬はとにかく高額です。患者が長期生存するということは、高額な通院治療が年単位で継続することを意味します。生命保険の死亡リスクは低下する一方で、医療保険やがん保険における長期給付のリスクは跳ね上がっている。まさに「長生きリスク」と「医療費リスク」の最前線(フロンティア)を、私たちは日々査定しているわけです。
本書は、研究者たちの血のにじむような努力と執念が「魔法の弾丸」を生み出すまでの胸躍るドラマを鮮やかに描き出しています。同時に、サイトカインストーム(免疫の暴走)の恐ろしさなど、免疫というシステムの複雑さも教えてくれます。人間の身体を守るはずの防御機構が、時として牙を剥く。それを薬でコントロールしようとする現代医療は、綱渡りのような危うさと隣り合わせです。
まとめ:アップデートされ続ける査定の目線
医学の進歩によって、私たちの査定基準も常にアップデートを迫られます。「古い医学知識」のまま告知書を眺めていては、適切なリスク評価はできません。本書は、そんな最新の医学的パラダイムシフトを俯瞰し、査定の「目線」を引き上げてくれる一冊です。日々の業務で目にする見慣れない分子標的薬の名前も、本書を読んだ後なら、人類の叡智の結晶として違った輝きを放って見えるはずです。
振り返れば、第1回でオプジーボの衝撃と最先端の免疫学を取り上げてから、気がつけばこの連載も10年近くになるんですね……。医学の進歩の圧倒的なスピードに振り落とされないよう、これからも皆さんと一緒に、気楽に学び続けていきたいと思います。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2026年9月)
























































































































































