査定に役立つブックガイド
元外科医。生命保険のアンダーライティング歴25年。そろそろ前期高齢者。
告知や診断書を見ているとアンダーライティングは常に最新の医療現場と直結していることを実感しますよね。そんな最新医学をキャッチアップしたいと本を読み続けています。そうした読書の中から医師ではなくても「これは面白い!」と思える本をレビューしていきます。レビューだけで納得するもよし、実際に読んでみるもよし。お楽しみください。
読書以外ではジャズ(女性ヴォーカル好き)を聴いたり、大ファンである西武ライオンズの追っかけをやってみたり。ペンネームのホンタナは姓をイタリア語にしたものですが、「本棚」好きでもあるので・・ダジャレで。
ブックガイド(最新号)
ー親を施設に入れる前にー
マンガ 認知症【施設介護編】
ニコ・ニコルソン 佐藤眞一/小島美里 著
ちくま新書 税込定価1034円 2024年9月刊行
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。第130回のテーマは「認知症」・・ですが、アンダーライティングのための認知症ではなく、より普遍的に認知症当事者の家族、あるいは認知症当事者になってしまったら「どうする」という視点で。
というのも、最近近い年齢(60歳前後~)のメンバーで話していると必ず出てくるテーマが「認知症の親をどうする?」なんですよね。この「認知症の親」問題が、50歳代~60歳代の世代にとって大きなテーマになっています。
一方、世の中には激増しつつある認知症高齢者をターゲットにした詐欺や強盗といった犯罪も激増中であることが日々報じられもしています。そんな犯罪とはもちろん違いますが、正規のビジネスである介護系の施設・事業所も同じように増えてきています。
介護施設といえば、特養・老健・サ高住・グループホーム・老人ホームなどいろいろあって、当事者になるまではその違いなんてわかりません。また、一旦わかっていても、介護保険制度は毎年のように見直されており、介護保険からの給付が変化すると、それぞれの施設のありさまも変わっていくという、まだまだ流動的な部分もあります。
例えば、一時期サ高住(=サービス付き高齢者住宅)が呼び名からしてもよさそうと入居する高齢者が激増しましたが、認知症の病状がすすんだり、障害がすすんだりしてサ高住を追い出されるケースが続出したりしているのです。
日本の認知症介護の特徴は「在宅介護でねばりすぎる」ところだと思います。濃密な人間関係を反映しているとは思いますが、子離れできない親、親離れできない子ども、そうしたものの延長に、認知症の親を在宅で抱え込んでしまう子どもという構図がありそうです。欧米流の、独り立ちしたら親は親、子は子で自分の人生を歩いていくという世界では認知症になったらドライに施設に入る・入れられてしまうようです。
日本でも次第に「認知症介護は施設に」となっていきつつありますが、どんな施設がいいのか、どれくらい費用がかかるのか・・・ネットで調べても自画自賛的なスポンサー付きのサイトばかりで信用できない、まさに「施設介護の夜明け前」の状態。
そんなときに、読んでほしいのが今回紹介する「マンガ 認知症 【施設介護編】」です。前書きにいわく―――
大好きな祖母が認知症になってしまい、母と二人で介護に取り組むマンガ家、ニコ。在宅介護が限界を迎えて施設に入居してもらったものの、祖母の認知症の症状がみるみる悪化していきました。二人はしょっちゅう呼び出され、かかる費用は月40万円・・・!?じつは、認知症の人には「向かない施設」があるんです。「この行動は本人からのSOS?」「職員さんとどう話せばいいの!?」介護事業を立ち上げて30年のコジマさんと認知症の心理学の専門家・サトー先生が、認知症の施設介護の不安を解きほぐします。
7割がたはマンガですのでサクサク読めますし、結論にもまあ納得。その結論というか、スタート地点は「その人にあった良い施設、そんなものはない!」では、どうする!――そういう視点に立たなければ無いもの探しをしているうちに死んでしまいますよ・・・親を施設に入れる前に、ぜひ読んで見てください。
(元査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2024年11月)