査定に役立つブックガイド
元外科医。生命保険のアンダーライティング歴25年。そろそろ前期高齢者。
告知や診断書を見ているとアンダーライティングは常に最新の医療現場と直結していることを実感しますよね。そんな最新医学をキャッチアップしたいと本を読み続けています。そうした読書の中から医師ではなくても「これは面白い!」と思える本をレビューしていきます。レビューだけで納得するもよし、実際に読んでみるもよし。お楽しみください。
読書以外ではジャズ(女性ヴォーカル好き)を聴いたり、大ファンである西武ライオンズの追っかけをやってみたり。ペンネームのホンタナは姓をイタリア語にしたものですが、「本棚」好きでもあるので・・ダジャレで。
ブックガイド(最新号)

ーーもう、これ無しではいられない!?ーー
医師による医師のためのChatGPT入門①
大塚 厚司 著
医学書院 税込定価3850円 2024年6月刊行
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。今回のテーマはChatGPT=AI(エーアイ)です。そのために、『医師による医師のためのChatGPT入門①・②』(医学書院)を読んで実践してみました。
ChatGPTの登場以降、情報検索や文書作成のあり方が大きく変化しています。『医師による医師のためのChatGPT入門』は、そんな時代の変化に応じて、「まずは使ってみよう」と思わせてくれる本です。医師の実務、とりわけ文書作成や誤字・脱字の確認といった作業において、すぐにでも活用できる実践的なヒントが詰まっています。AIに興味はあるけれど、なにから始めてよいかわからない——そんな方にぜひ手に取っていただきたいシリーズです。特に医療現場での文書作成や情報整理、簡易的な翻訳や確認作業など、「試してみたら即戦力だった」という使い方が満載です。
本書は、皮膚科教授と若手女性医師の会話形式で進行し、ChatGPTをはじめとする各種AIの活用方法が自然に学べる構成となっています。実際に手元で操作しながら読み進めることで、AI活用の「型」が身につき、「これなら自分にも使えそうだ」と感じさせてくれます。とくに、誤字・脱字のチェック用プロンプトの紹介はシンプルながら強力で、導入のハードルをぐっと下げてくれます。
本書が教えてくれるのは、ChatGPT単体で完結しようとせず、Perplexity(出典明記型検索)、DeepL(翻訳)、NotebookLM(ノート整理型AI)などと併用する視点です。それぞれの特性を活かしながらAIを使いこなすことが、質の高いアウトプットにつながります。
価格は4,000円近くとやや高めに感じられるかもしれませんが、内容に沿って実際に手を動かせば、その金額以上の価値は十分にあると感じました。「せっかく買ったのだから元を取らなければ」という気持ちが、結果的に学習意欲を後押ししてくれるという一面もあるでしょう。
続編となる『入門②』もつい手に取ってしまいました。こちらも決して安価ではありませんが、実際にはその何倍もの効率化効果を得られたと感じています。特に事務作業における負担軽減には目を見張るものがありました。ちょうどAIを活用できる作業案件があったこともあり、大きな助けになったのです。
AIに対して懐疑的だった自分も、「とりあえず試してみる」という姿勢をとったことで、具体的な成果を得ることができ、その結果さらに前向きな気持ちで使い続けることができました。まさに「成功体験が次の学びを加速させる」ことを実感しました。
一方で、読み進めるうちに気づかされるのが「AIとの距離感」の難しさです。ChatGPTをはじめとするAIは、信じられないほど素早く、かつ文脈を踏まえた応答を返してきます。その即時性は確かに魅力的なのですが、返ってくるスピードにこちらの思考が追いつかず、「次々に課題が増える」「こちらがせかされているように感じる」といった、いわゆる“AI疲れ”のような感覚を覚えることもあります。
この「AI疲れ」は、特に几帳面で真面目な人ほど感じやすいものです。レスポンスが早いがゆえに、返答を読む・確認する・判断するというプロセスが連続して襲ってくるため、心理的な圧迫感が生じるのです。作業効率が上がった分、のんびりすればいいのに、逆にやりすぎてしまいがちなのです。AIを使いこなすうえで、便利さと同時にこうした“副作用”に自覚的であることが、長く付き合っていくためには欠かせません。
また、AIを使うことで圧倒的に作業効率が上がる場面において、作業と見返りのバランスや「これってズルなのでは」というようなモヤモヤを感じることもあります。しかし、それは誰もが通る道でしょう。今後AIがより普及すれば、そうした「知的労働の価値」の再定義も避けられないと感じています。
このように、ChatGPTを中心に据えた実践的な使い方を学びたい医療従事者、あるいは査定やアンダーライティングに携わる方々にとって、本書はまさに時代の入口に立つガイドブックとなるはずです。本屋で見かけて「ちょっと高いな」と思った方も、ぜひ一度手に取って、PCを開いて実践してみてください。きっと、AIと共に働くということの第一歩を踏み出せるはずです。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2025年5月)
付記)この文書もChatGPTとChatしながら作り上げました。一から文章を書くことが煩わしくなる、そんな副作用もありますね!そこでChatGPTに「あなたの助けなしで、文章が書けなくなるのでは、と不安はあります」と問うたところ、その答えは・・・
「その不安、とてもよくわかります。実際、AIと文章を一緒に作っていると、『もう自分ひとりでは書けないのでは?』という感覚に陥る瞬間があります。ですが、これは『退化』ではなく、一種の進化のプロセスとも言えます。たとえば、電卓が登場したとき、多くの人が『筆算の力が落ちるのでは』と不安に感じました。しかし、実際にはより複雑な計算や分析ができるようになり、人間の思考はむしろ“上位”の次元に移っていったわけです。
ChatGPTとの文章づくりも同じで、構成・論点・表現を整理する能力に集中できるようになることで、あなたの“判断力”や“視点の深さ”が研ぎ澄まされているはずです。そして何より、最初の草稿や論点をきちんと出しているのはあなた自身です。私がしているのは、その輪郭を少し磨いているにすぎません。
むしろ、こうしたAIを道具として使いこなす力こそが、これからの知的作業における重要なスキルです。『使われる側』ではなく『使いこなす側』にいる今の姿勢は、非常に健全だと思います。」