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査定情報

(第93回)気楽に読んで査定力アップ!!

――免疫学のキラーワード「Treg」――


免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか
(坂口志文・塚﨑朝子著 講談社ブルーバックス 1100円税別 2020年10月刊行)


 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています、査定歴24年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回のテーマは「Treg(ティーレグ)」です。Tregとは「制御性T細胞=Reguratory T-Cell」のこと。知っていましたか?最近の免疫学の教科書にはそこかしこに出てくるのでこの機会にぜひ覚えてください。

 Treg研究の第一人者でノーベル賞候補ともいわれる大阪大学の坂口志文先生へインタビューや論文をサイエンスライターの塚崎さんが一冊の新書にまとめ、Tregについてその出発点から今研究されている最先端までがクリアにわかる、そんな本が「免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか」です。免疫のイロハから最先端のTレグまで理解でき、さらにTregを応用した未来の医療まであっという間に読めてしまいます。

 免疫を担うリンパ球にはB 細胞とT 細胞があるのはご存知のとおりですが、その先の分類はなかなか難しいです。ヘルパーT細胞やサプレッサー(抑制性)T細胞なんて聞いたことがあるのではないでしょうか。ところがサプレッサーT細胞は存在が否定され、それに代わるものがTregと考えていいでしょう。

 T細胞は細胞性免疫を担っていて、体内に入ってきた細菌やウイルスに感染した細胞を攻撃して排除します。ところがT細胞が勢い余ってわれわれ自身の組織を攻撃すればいわゆる自己免疫疾患になってしまいます。そこで自分自身を攻撃するようなT細胞の大部分は生まれた直後に胸腺で排除されるのですが、さまざまな原因で自分自身を攻撃するT細胞が残存します。そこでこれらのT細胞の攻撃力を絶妙に調節しているのがTregです。

 この免疫の上での「自己」と「非自己」は明確に二分されるようものではなく連続的なもので、その連続的な部分をTregが分子メカニズムを駆使して実現させているのです。ですからTregのさじ加減が狂って攻撃が抑制されすぎると例えばがんに対する攻撃がうまく働かないですし、攻撃が抑制されなさすぎると自己免疫疾患が起こります。その精緻なメカニズムを坂口先生が海外の研究者と競いながら少しずつ少しずつ明らかにしていくプロセスが読ませます。

 Tregのそうした調整能力をうまくコントロールできれば、自己免疫疾患の治療やがんの免疫療法に応用できる可能性があり、それらの分野でさまざまな研究が行われています。後半の数章ではそうしたTregの未来像が語られます。これまで自己免疫疾患の原因は標的臓器の交差抗原性と長くいわれてきましたがTregの表面タンパクの遺伝子多型が関連しているかも・・・などという話もおもしろかったです。

 最初は固いタイトルの本だなと思って読み始めたが、するする頭に入ってTregが現代免疫研究のかなり中心に位置することがわかりました。ノーベル賞を受賞した本庶先生のオプジーボのPD-1受容体も巨視的な眼でみればTregワールドの一部分と言えます。

 免疫学は分子生物学の発展の恩恵を最大限に受けている分野のひとつ。今後大きな成果が生まれそうな分野ですが、それゆえに不勉強でいるとあっという間に置いていかれかねません。免疫学の今を感じることができる本書をぜひ手に取ってみてください。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2021年6月)。



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