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査定情報

(第78回)気楽に読んで査定力アップ!!


――LGBT治療のリアルが満載――
性転師
「性転換ビジネス」に従事する日本人たち
(伊藤元輝著 柏書房 1600円税別 2020年6月刊行)



 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています、査定歴23年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回のテーマは「LGBT(性同一性障害)治療の現在地」。例えば、今の日本でLGBTで性別適合手術をいったいどれくらいの人がどんな施設で受けているのか知っていますか。タイで手術を受けたという話をよく聞きますし、診断書や告知書で目にすることも増えていますが、なぜタイなのでしょう。手術が健康保険適用となりましたがその影響はどうなのでしょう。

 そんなLGBTに関するさまざまな疑問の多くに答えを出してくれるのが本書「性転師」です。タイトルと表紙カバーからキワモノ本のように見えなくもありませんが、本書は共同通信社の記者がきちんとした取材にもとづいて書かれたしごく真っ当な本。日本のLGBT治療の現在地を知るにはベストともいえる一冊です。

 本書からざっくりとした数字を挙げてみましょう。日本で戸籍上の性別変更をするには、性別適合手術を受けたあと精神科医に戸籍変更診断書を書いてもらい提出する必要があります。その診断書を書いている医療機関の一つが実数分析を公表していますので、それと国全体での性別変更数から全体像を推定できます(推定はわたしが本書記載事項から行ったもの)。

 日本全体で戸籍上の性別の変更者数は年間1000人程度、男性から女性(MtF)と女性から男性(FtM)の比率は1:3です。女性から男性が多いというのが意外な感じがしますよね。日本の戸籍変更には性別適合手術が必須なのを知っていますか。手術場所はタイが75%を占め、ほとんどがヤンヒー、ガモンの2大病院で行われています。残り25%の国内の手術のうち9割はあのナグモクリニックです。つまり、毎年、男性から女性への戸籍変更が250人、女性から男性の戸籍変更が750人で手術場所はナグモクリニックが250人、タイの2大病院で750人程度・・ということになります。

 本書のタイトル「性転師」は著者の造語ですが、日本人がタイで性別適合手術を受けるときにそのほとんどのプロセスを世話してくれるいわば性転換のアテンド業者のことを意味しています。表紙写真の男性がその草分け的存在であるアクアビューティー社(http://www.aquabeauty.co.jp/)の坂田代表。2002年に会社を立ち上げました。本書前半はこうしたアテンドの業者への取材やタイの病院への取材をもとに書かれています。写真で見るとタイの病院はまるでホテルのように立派です。タイでは1997年の通貨危機をきっかけに医療ツーリズム、その中でも性別適合手術が急速に発展したんです。

 一方で、日本ではLGBTの社会的認知度が高まり戸籍上の性別変更が可能になった一方で性別変更の必須要件である性別適合手術を実施できる医療機関がなかなか増えてこないというわけで、アテンド業者に仲介してもらいタイで手術を受ける日本人が急増したのです。技術的にも経験豊富なタイの医師ほうが上手ということももちろんあります。

 本書後半では、カルーセル麻紀からブルーボーイ事件、埼玉医大原科(はらしな)先生、以前紹介した「ペニスカッター」和田耕治先生(2007年死去)と性別適合手術の歴史をたどります。LGBTフレンドリーであることが企業のトレンドとなり、そのために性別適合手術のニーズが高まったにもかかわらず、結局のところ国内医療機関はそれにほとんど手を出さなかったのです。

 LGBTの性別適合手術は2018年に公的医療保険の適応となりましが、手術前に必須なホルモン療法が保険適応となっていないというチグハグさもありタイ頼みの現状はなかなか変わりそうにありません。そんな状況の中、COVID-19が長引きタイに渡航できない状態が続けばどうなっていくのでしょうか。アテンド業者やタイの病院の持続可能性はいかに。

 書かれていることのリアリティに引き込まれて一気に読んでしまいました。具体的な数字を見て皆さんどう感じますか。毎年10万人に1人は性別変更しているのは予想より多い?少ない?(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2020年9月)




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